FILE 223 ・京芸「描写」の研究
1.過去10年の京芸描写課題のまとめ
京芸入試に挑むにあたり、対応力が必要であることは、これまでの京芸ファイルの中でも繰り返しお伝えしてきました。
対応力に関しては、色彩や立体の課題で取り上げられることが多いイメージですが、描写課題でも同じことがいえます。
過去の描写課題を見てみると、16年度には画用紙から大きくはみ出すほどの大きさの提灯が出題されたり、17年度には紙コップ50個が出題されたりと、まさに対応力が必要となる課題が出題されていました。
一方で、昨年は紙袋・組み立て式透明ケース・りんご・玉ねぎといったオーソドックスな課題が出題されています。対応力を高めるためにも、過去10年間に出題された課題を見比べ、京芸描写課題の出題傾向を考察してみましょう。
過去10年の京芸描写出題一覧(12年度~21年度)
2.京芸描写課題の出題傾向
過去10年間に出題された課題を見た上で、京芸描写課題(モチーフ)の出題傾向として判断できるものを上げてみます。
・ハイトーンモチーフが出題されやすい。
・透明、半透明モチーフが出題されやすい(中に別のモチーフを入れることもできる)。
・繊細な表情の描き分けが求められるモチーフが多い。
・解答用紙は四つ切大の画用紙で、縦横の指定は自由となっている場合が多い。
・情報量の多いモチーフが度々出題される。
近年のモチーフを見てみると、17年度の紙コップ、18年度のマニラロープ、20年度の手ぬぐいなどのハイトーンモチーフや、19年度のポリ袋、21年度の組み立て式透明ケースといった半透明モチーフが多く出題されており、それが傾向の一つとして上げられるでしょう。
情報量の多いモチーフとしては、13年度のインスタントラーメン(袋から出して一部を描く条件)や15年度の毛糸だま、20年度の紙風船などが上げられます。
以上から考察するに、これまでの傾向が大きく変化しているという印象は受けません。しかし、17年度に紙コップ50個が出題されたことを考えると、「少しずつ出題傾向の幅が広がっている」と考えて対策をした方が良いと思います。以下、いくつかポイントをまとめてみました。
ハイトーンモチーフ、半透明モチーフでは等、繊細な表情を描き分けるハイトーンモチーフと半透明モチーフは、近年の京芸描写課題で出題頻度の高いモチーフです。 |
19年度 21年度 |
画面構成・構図の重要性過去の高得点作品を見ると、間合いのとり方などが絶妙です。やはり、画面構成と構図で得点の差が大きくつくのだと考えられます。 |
16年度 18年度 |
情報量の多いモチーフへの対策情報量の多いモチーフの出題は、京芸描写の基本的な出題傾向であり、対策は不可欠です。単にややこしいモチーフを漠然と描くのではなく、具体的な時間配分を意識した対策が求められます。 |
17年度 20年度 |
まとめ
過去の出題を見ながら京芸描写課題の傾向を見てきましたが、描写の評価基準としては、「構成」「構図」「描き込み」など、様々なものが考えられます。京芸描写の評価基準に関しては特別な傾向があるようには思えません。「京芸描写の評価のポイントはここだ!」というような安易な決めつけは、大変危険です。もう一度、評価基準の基本に立ち返り、「構成」「構図」について復習し、入試までにどのようなモチーフが出題されたとしても対応できること、時間の中で描き込みの密度を上げることを目指して、対策を進めていくことが重要です。
次回予告
次回は『京芸入試直前「ラスト1週間の課題」』を2/17(木)に掲載する予定です。京芸入試をおよそ1週間後にひかえて、最後の1週間をいかに過ごすべきか、また京芸を受験するみなさんのために、「入試前日までにしておくべきこと」、「入試当日の心構えと具体的な注意点」を考察します。受験生だけでなく高1、2年生も将来の受験の事を想像しながら、ぜひお読み下さい。
※内容は予告なく変更になる事があります。