「テーマと条件からの発想」の出題

今年度はモチーフとして「紙（A3上質紙）」が与えられ、 問題文には「皺を寄せて観察」とありました。つまり、観察に基づいた表現が求められているといえます。観察に基づいた表現というのは実に多様であり、解答には幅広い表現が許されていたと考えられます。

観察の対象となるモチーフは、紙にできる「皺」でした。とても簡素で、日常にあり触れており、おそらく多くの人が普段は気にも留めていないものです。 この、一見、目新しさのない、簡素で味気ない情報から、「どれほどの魅力を感じ取れるか」といった、「感受性」や、「好奇心」、「表現欲」など、自分をとりまく世界に対する姿勢そのものが試されたのではないでしょうか。

今年度のような、抽象表現、具象表現のどちらでもゆるされ、表現の自由度が高い出題に於いては、漠然とした抽象表現や、ただ単に描き写しただけの、客観的な写実表現に陥ってしまわないよう、注意する必要があります。 画面構成、配色、彩色方法の選択肢とその組み合わせは無限に存在します。 対象から得られる様々な情報のうち、作者が「どのような魅力」を感じ取ったのか、作品の主題となるコンセプト（狙い）を定める事が重要です。そして、コンセプトを基に、鑑賞者に分かりやすく、かつ、美しく伝える為の構想（表現戦略）を練る事がポイントとなります。

近年の類似入試問題

15年度入試問題

16年度入試問題

2015年度入試は「モチーフとテーマからの出題」、2016年度入試では「モチーフと条件からの出題」でした。 今年度はモチーフのみが与えられましたが、解答に於いてポイントとなった事柄は同じであったと考えられます。 作例として挙げているのは、いずれも、実際の入試に於いて高得点で合格した入試再現作品です。

同じモチーフであっても、そこに見出す魅力は人それぞれです。 積極的に形をデフォルメしている作品、元々の形を大切に具象的な表現を基調にしている作品、マチエールを多彩に扱っている作品、平塗りを基調に使用している作品など、解答の方向性も、異なります。

実に様々なテイストの作品達ですが、総じて言える事は、作者の「狙い」が明確に表現されており、作者がモチーフから得た印象（魅力）が、作品上で存分に表現されている事です。

入試という「失敗する事が許されない制作の場」であっても、自分の感性を信じ、果敢に表現を追及している姿勢、作者の作品制作に対する誠実さや潔さ、を感じる事が出来ます。

アスクでの参考課題と作例

課題例　R05035

課題例　R05044